瑞々しい気韻に充ちた、寿ぎの白磁
今年も清爽な白磁が輝きを放つ季節が巡ってきた。「白磁」の重要無形文化財保持者(人間国宝)・井上萬二氏による、和光では第33回目を数える個展は、めでたくも80歳の傘寿を迎えた祝賀の会となる。
「人生は、直線に行けば何事も早いけれど、遠回りしていい手もあるし、発見もあるんです」と井上氏。太平洋戦争後、柿右衛門窯と奥川忠右衛門氏の下での長年にわたる修業。窯業試験場勤務による試作の日々。陶芸家としては遠回りの歩みの中で、海外での指導経験を含めて、氏は柔軟な感性と見識を育んできた。それ故に傑出した轆轤(ろくろ)の技で表現された作品は多様な形を持ち、瑞々しい気韻、見る者を解放するような悠然とした包容力に充ちているのであろう。出品作の「白磁菊彫文壺」も有機的なふくらみの造形と高貴な光沢が渾然一体となって、見事な「美」を形づくる秀作である。
今回の展観では、轆轤挽きの限界ともいえる継ぎ目のない大壺や大皿、鉢、蓋物、組皿、盃、さらに傘寿記念限定作品など、大小100余点が出品される。「心がしおれたら作品もしおれてくるから、100歳になっても溌剌(はつらつ)としておらんと」。少年の頃、飛行士に憧れて見上げた大空の白雲のように、氏の好奇心と創作意欲は限りなく涌き続ける。 昨今、文化庁記録映画の制作が行われるなど多忙を極める中、地元住民への無償の作陶指導や戦没者慰霊式の参列を継続していることも、氏の篤実な人柄を示すものであろう。愛すべき名工の傘寿を作品とともに晴れやかに祝したい。
◆会期中、会場にて井上萬二氏による作品解説を予定しております。
6月18日(木)・25日(木) 各日ともに14時~
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「白磁菊彫文壺」 径31.5×高さ31cm |
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![]() | 傘寿記念限定作品「白磁紫牡丹亀甲彫文皿」 径32×高さ6.5cm |
井上萬二(いのうえ・まんじ)
| 1929年 | 佐賀県有田町に生まれる |
| 1968年~ | 日本伝統工芸展入選 |
| 1969~76年 | ペンシルバニア州立大学で作陶指導のため4回渡米 |
| 1971年~ | 日本陶芸展入選 |
| 1977~2008年 | 和光にて個展 |
| 1979年 | 卓越した技能者(現代の名工)に表彰される |
| 1983~2005年 | ニューメキシコ州立大学で美術指導のため16回渡米 |
| 1987年 | 日本伝統工芸展文部大臣賞受賞 |
| 1995年 | 文化交流のためドイツにて個展(97年ハンガリー、99年モナコ、2000年ポルトガル、07年ポーランド) 「白磁」の重要無形文化財保持者に認定される |
| 1997年 | 紫綬褒章受章 |
| 2002年 | 西日本文化賞受賞 |
| 2003年 | 旭日中綬章受章 |
| 現在 | 重要無形文化財保持者、日本工芸会参与、一水会運営委員、有田町名誉町民 |























