
玄妙な佇まいに潜んだ洒脱な気配を遊ぶ
端然とした市松模様が織りなす律動感の潔さ。大きな四角形の中に細かな格子がかたちづくられ、複雑で幽玄な質感と表情を生み出している。10角形に面取りされ、上下二段の矩形の配列から成る水指は見る方向により、豊かに表情を変える。「色絵銀彩水指」。洋絵具と銀泥で描きつくした色絵磁器である。
2006年に続き、和光では2度目となる前田正博氏の作品展が和光並木ホールで開催される。2009年、第56回日本伝統工芸展において日本工芸会総裁賞を受賞した前田氏。前回はサボテン、鳥、ヤシの木が鮮やかな色調を背景にリズミカルに躍動する、現代の花鳥風月を展観。今回は氏の拓いた新たな境地がホールを満たす。
「工芸の基本は明るく、楽しく、美しく、ですよ」と笑う前田氏。だが、氏の製法は驚くほど緻密である。その硬質感を愛するゆえにあえて扱い難い磁器を選ぶ。磁器は轆轤(ろくろ)を用いて成形する。そのため、口縁は丸い。氏はそれを六角形、八角形と多角形に削る。面取りである。高温で焼成した後、焼き上がった磁器を黒く着色し、再び低温で焼く。それにごく細いテープでマスキング。刷毛で銀粉をうち、テープを剥がしてさらに焼く。その跡が織地のように微細な格子となって浮きだすのだ。若い頃は油彩画を描いていた前田氏。「織目をつけたり、重ね描きのできる洋絵具を使って上絵を描くのはマチエール(絵肌)のようなものを出したいからかもしれません」とにこやかに語る。
鉢や花器と並んで、茶碗、水指など磁器による茶道具を創り続けてきた氏は、今回会場の一角に立礼(りゅうれい)の茶席の雰囲気を演出する。 漆の卓に映える色絵磁器の世界を心ゆくまで楽しんでいただきたい。
前田正博(まえだ・まさひろ)
| 1948年 | 京都府久美浜町に生まれる | |
| 1973年 | 日本陶芸展入選 | |
| 1975年 | 東京藝術大学大学院工芸科陶芸専攻修了 | |
| 日本伝統工芸展入選 | ||
| 1983年 | 今日の日本の陶芸展出品 (ワシントン・スミソニアン博物館、ロンドン・ヴィクトリア&アルバート美術館) | |
| 1988年 | 日本伝統工芸展日本工芸会奨励賞受賞 | |
| 1992年 | 日本の陶芸「今」100選展出品(パリ、東京) | |
| 1996年 | 現代日本陶磁秀作アジア巡回展出品 | |
| 1997・2000・01年 | 伝統工芸新作展鑑審査委員 | |
| 1998年 | 伝統工芸新作展奨励賞受賞 | |
| 2002年 | 日本伝統工芸展鑑審査委員 | |
| 2005年 | 菊池ビエンナーレ展優秀賞受賞 | |
| 東京・六本木に工房を移転 | ||
| 2006年 | 和光ホールにて個展 | |
| 2009年 | 日本伝統工芸展日本工芸会総裁賞受賞 | |
| 現在、日本工芸会正会員 | ||






















