
うちよりあふれるしろがねの輝き
満開の桜は地から天へと盛り上がり、その生命力が横溢する。雀らは翼を拡げ、大空に飛び立つ。周囲の三角形は果てなく続く山の連なりか。"壺の曲面に配置された曼荼羅"とでも形容したい生気に満ちた天地、「墨地紫苑釉裏銀彩桜文(すみじしおんゆうりぎんさいさくらもん)花器」。中田一於氏の作品だ。
昨年、伝統工芸の保存・伝承に貢献したとして紫綬褒章を授与された中田氏。九谷で色絵を生業とする名窯に育った氏は約30年前に釉裏銀彩の技法を確立した。「人とは違う仕事をしたいと思っていました。銀箔という素材を使ってみたかったのです」。だが、銀の持つ宿命は酸化による変色。九谷でも使う人はいなかった。釉裏金彩は既に重要無形文化財保持者・
田美統(みのり)氏が制作している。金彩があるなら、銀彩があってもよいのではないか。そんな思いで挑戦した釉裏銀彩には予想外の利点があった。釉薬で閉じ込めることによって、銀の美しさがそのまま保たれるのである。
釉裏銀彩には手間と根気が必要だ。素焼きの磁器に下地を塗り、焼成。切った銀箔を膠(にかわ)で張り、乾燥させて焼成。銀の濃淡を表現するために2枚、3枚と箔を重ね、模様を切り出し、その折に出た銀箔の溜りを均(なら)す。何度も焼成を重ね、息の詰まるような工程を経て、銀の輝きは不変のものとなる。
「私の仕事の大前提は銀箔を切って張ること」。釉裏銀彩の祖・中田氏は淡々と語る。その師である重要無形文化財保持者・三代目德田八十吉氏の言葉「良いものを作っているという自信を持ちなさい」に励まされ30年が経った。「これからも細かい仕事に挑戦し続けたいと思っています」。
大きな壺から小さな香合まで、花が咲き、幾何模様が舞う。釉裏銀彩30年の集大成を心ゆくまでご堪能いただきたい。
◆会期中、会場にて中田一於氏と、花人 唐木さちさんによるギャラリートークを予定しております。
日時 : 2月17日(金) 13:30~
中田一於(なかだ・かずお)
| 1949年 | 石川県小松市に生まれる |
| 1968年 | 家業の中田錦苑窯で陶芸一般を習得 |
| 1974年 | 一水会入選、以後連続入選 |
| 1978・80・82年~ | 日本伝統工芸展入選 |
| 1982年 | 日本伝統工芸展 奨励賞受賞、同正会員となる |
| 1987年 | 伝統九谷展受賞 |
| 1989・92年 | 和光にて個展 |
| 1990年 | 日本伝統工芸展 文部大臣賞受賞 |
| 1991年 | 日本伝統工芸展鑑査委員 |
| 1993年 | 「釉裏銀彩壺」がワシントン・スミソニアン研究機構のサックラー美術館の永久保存作品に 選ばれる |
| 2002年 | 石川県指定無形文化財保持者に認定 |
| 2010年 | 日本伝統工芸展 日本工芸会保持者賞受賞 |
| 2011年 | 紫綬褒章受章 |






















