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日本の伝統工芸は、戦後に数多の工芸家を輩出し伝統の技を高度に継承、発展させて今日に至っています。その芸術は円熟期を経ているのでしょうが、今日、国際的に評価される新たな時代を迎えて、中堅あるいは新世代の台頭が待たれているように思います。
本展に集う5人は、異なる素材分野ですが、いずれも近年の日本伝統工芸展で優秀賞受賞を成し遂げた作家たちです。家出隆浩氏は、異なる金属の平ヒゴで網代編みし鍛造する独自の「あやおりがね」という手法で軽妙で美しい創作を表して活躍するほか、平織を組み合わせて立体的に構成した造形も含めて、海外でも注目されています。奥井美奈さんは、柔和な乾漆形体に堅実な漆塗りと蒔絵の装飾をほどこした制作で近年の活躍があり、自らの造形を生み出そうとしています。小島有香子さんは、板ガラスを何枚も接着し削り研磨する造形を手がけています。光が透過して生じる層の濃淡や陰影が形体と結びついた独特な表現です。まさに気鋭の作家として台頭し、自らの感性に従い個性的な創作をかたちづくろうとしています。
彼らに比して中堅という以上の藤塚松星氏は、網代編みや鳳尾竹の丸竹の力強い制作に加え、黒や紫、褐色に染めたヒゴを櫛目に連ね面的に構成する彩変化という籃の制作で注目されています。近年は透かしと染め分けたヒゴを編み込む広やかな籃に清冽な作風を表しています。また渡辺晃男氏は、黒柿や神代欅、楓などの美麗な材を駆使した指物を主に、異色の材を寄木し錫や貝、染角等を象嵌する浪漫的な制作で定評を得ています。
彼らは、素材や手法の再認識を経て創作表現として個性を開拓するに至っており、清新な造形を導き出しています。将来を担うであろう彼らへの期待は高まるばかりなのです。
文:東京国立近代美術館 特任研究員 諸山正則
出品作家5名と東京国立近代美術館特任研究員・諸山正則氏によるギャラリートークを予定しております。
2月24日(土)14:00~
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家出隆浩 |
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奥井美奈 |
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小島有香子 |
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藤塚松星 |
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渡辺晃男 |
1962年 | 福井県に生まれる |
1993年 | 日本金工展 文化庁長官賞受賞 |
1995年 | 日本伝統工芸展 日本工芸会総裁賞受賞(文化庁買上げ) |
2015年 | 日本伝統工芸展 文部科学大臣賞受賞(文化庁買上げ) |
2016年 | 紫綬褒章受章 |
所蔵 | 東京国立博物館、文化庁、ウェールズ国立博物館(イギリス)、マンチェスター美術館(イギリス) |
1970年 | 神奈川県に生まれる |
1992年 | 東京女子大学卒業 |
2001年 | 石川県立輪島漆芸技術研修所髹漆科卒業、室瀬和美に師事 |
2006年 | 伝統工芸新作展 日本工芸会賞受賞、日本伝統工芸展 東京都知事賞受賞 |
2010年 | 東日本伝統工芸展 第50回展記念賞受賞 |
2012年 | 東日本伝統工芸展 奨励賞受賞 |
2017年 | 日本伝統工芸展 日本工芸会総裁賞受賞 |
1979年 | 生まれる、千葉県に育つ |
2001年 | 多摩美術大学立体デザイン専攻 クラフトデザイン専修 ガラスコース卒業 |
2006年 | 富山ガラス造形研究所 研究科修了 |
2006・08・09・ 12~17年 |
SOFA CHICAGO出品(アメリカ) |
2007年 | 国際ガラス展・金沢2007 第10回展記念特別賞受賞、日本伝統工芸展 高松宮記念賞受賞 |
2011年 | 現代ガラス大賞展・富山2011 大賞受賞 |
所蔵 | 東京国立近代美術館工芸館、樂翠亭美術館、富山市ガラス美術館、石川県能登島ガラス美術館 |
1949年 | 北海道に生まれる |
1993年 | 日本伝統工芸展 東京都知事賞受賞(文化庁買上げ) |
1994年 | 伝統工芸木竹展 文化庁長官賞受賞 |
1996~2010年 | 隔年で和光にて「響の会」出品 |
2009年 | 日本伝統工芸展 奨励賞受賞 |
2011年 | 日本伝統工芸展 東京都知事賞受賞 |
2012年 | 紫綬褒章受章 |
2017年 | 伝統工芸木竹展 文部科学大臣賞受賞 |
1953年 | 千葉県に生まれる |
1992年 | 伝統工芸新作展 奨励賞受賞 |
1993年 | 伝統工芸新作展 三越賞受賞 |
1996~2010年 | 隔年で和光にて「響の会」出品 |
2011年 | 東日本伝統工芸展 日本工芸会東日本支部長賞受賞 |
2013年 | 東日本伝統工芸展 MOA美術館賞受賞、伝統工芸木竹展 東京都教育委員会賞受賞 |
2014年 | 日本伝統工芸展 東京都知事賞受賞 |