展覧会のご案内
華やぎの工芸展
―陶・漆・木・金属・硝子の物語―
- 会期
- 2021年9月3日(金) ~ 2021年9月14日(火)
10:30~19:00(最終日は17:00まで)
セイコーハウス銀座 6階
セイコーハウス銀座ホール
工芸には様々な素材があります。今回は陶・漆・木・金属・硝子という5つの領域の作家が集います。
丹羽シゲユキさんは、花などの植物を題材に、白い磁器の塊から形を削り出します。分厚い磁器を丹念に削る仕事は近年磁器の世界で増えつつありますが、丹羽さんの作品には花弁の一枚一枚に柔らかな動きが見られ、生き生きとした清楚な美しさを湛えています。花そのものが器でもあるという両義性も魅力です。
笹井史恵さんは、麻布と漆を塗り重ねる乾漆技法で量感のある形を築いています。鮮やかな赤い漆のほか、近年、寒色系の色漆も試み、いずれもエッジの立った明快な形を強調しています。手に取った際の軽さも乾漆の特徴で、滑らかな表面とともに、より親近感を示しています。
古谷禎朗さんは、木工の指物を得意とする作家です。蓋つきの箱などのほか、キャビネットや椅子のような家具も制作しています。木材の美しい面と線で構成する軽やかでシャープな形はいかにも現代的で、形の美しさが人の身体に馴染むだけでなく、例えばウォルナットの木の手触り、肌触りのよさも体感できます。
釋永 維さんは、金属の板に無数の穴を空け、それを鍛金技術で曲げていきます。硬いイメージのある金属が、釋永さんの手によって柔らかく動き出し、その繊細な凹凸や重なりが、金属の新たな魅力を引き出しています。最近は細長い金属の線を強調し、空気を包み込むような、新たな手法も試みています。
小川郁子さんは、切子技法を用いた硝子の器に取り組んできました。硝子の器の厚みにもこだわり、時に切子模様と器形とのダイナミックな関係性を築いています。被硝子(きせがらす)の色と透明な硝子とのコンビネーションの美しさも、この素材ならではの表現です。
古より日本には様々な素材の工芸を取り合わせて並べ、空間をより豊かにする「設え」の発想がありますが、今回の展覧会では、5人の作品からいずれかを選び、その出合いや組合せにより生まれる新たな物語も楽しんでいただけることでしょう。
文:本展監修者・多摩美術大学教授 外舘和子
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笹井史恵
漆
手で大切なものを包み込む形をモチーフに、乾漆技法で朱漆を使い、花器を制作しました。やわらかい質感とシンメトリーな形が調和した器になります。
「つつむ-花器」(8.5×25×高さ14.5㎝)
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丹羽シゲユキ
陶
「はなゆめあそび」は、-はなやかでゆめのようなあそび-という思いを込めた造語です。「羽華」は、羽根のような、はなびらのような柔らかな雰囲気を取り入れた新しいシリーズです。板状にした磁器土を自然乾燥で変形させた後、そこから削り出し、焼成時の揺らぎも取り入れました。
(奥から)
白磁削手花器「はなゆめあそび」(15.2×17.2×高さ16.5㎝)
白磁削手華片皿「羽華」(14.5×19.5×高さ5.6㎝)
白磁削手銘々皿「羽華」Ⅰ(12×15.5×高さ3.7㎝)
白磁削手銘々皿「羽華」Ⅱ(13×17.5×高さ3.5㎝)
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古谷禎朗
木
日本の木の椅子のアイデンティティである板組み構造の椅子です。背もたれは杢目の美しいウォルナットの厚盤を削り落とし、座る人の腰から背、頭までを包み込めるように刳り、優美なラインを創出するよう心掛けました。
「ハイバックアームチェア」(60×63×高さ106㎝)
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釋永 維
金属
自然の気配、確かにあるけれど、もう目にすることのない記憶の印象を表現しました。
「鼓動」(42×38×奥行23㎝)
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小川郁子
硝子
青緑からイメージされる穏やかで瑞々しい海の情景が表現できたらと思い制作しました。ガラスの透明感を大切に、青緑の美しさが引き立つようカットし磨き上げました。
被硝子切子鉢「瑞波(みずなみ)」(26×29×高さ15.9㎝)