和光ホールのご案内

前田金彌人形展

会期
2011年10月8日(土) ~ 2011年10月17日(月)

10:30~19:00(最終日は17:00まで)

和らぎと温かさの中から生まれ出でた人形たち


 右手に杖を持ち、左の袖には巻物を手挟(たばさ)み、こころもち背を丸めた翁。威厳と呼ぶにはあまりにも穏やかで優しい笑みを浮かべ、ゆったりとした長衣の下の膝はこちらに歩み寄るかのように、その丸みを透かし見せる。

 「安らけく」と名付けられた本作は、このたびの震災で大きな悲しみを受けたすべての方々の心が安らげば、との祈りを込めて創られた。いつもは穏やかな年配の女性像を多く手がけている人形作家・前田金彌氏の作品の中ではやや趣が異なり、具象から離れて自身の精神性を表現した、これまでにない氏の境地を窺(うかが)うことができる。

 和光では5年ぶり8回目となる前田金彌人形展。「今年で82歳になりましたが、まだ一生懸命創っていますよ」と温和な丸い顔をやさしくほころばせる。衣裳人形の重要無形文化財保持者(人間国宝)・野口園生氏に師事し、この道に入ってから半世紀はとうに過ぎた。だが、前田氏は師の技を後世に残していくことが自分の義務であると語る。木芯桐塑胡粉仕上げ布木目込み。桐の木を削り出した木芯を桐塑で造形し、十分に乾燥させる。さらに、磨き上げた胴に溝を刻み、衣裳となる時代裂(ぎれ)を木目込む。よい模様がなければ自ら染色して創り出す。地塗り・中塗り・上塗りの各段階ごとに丹念に胡粉が塗り重ねられ、独特の艶を放つ顔や手。師から継承したものに、前田氏の技法と感性が婉然と一体化する。伝統がどのように創られていくのかをあらためて認識させられ、その厳粛さに襟を正す思いだ。

 「楽しい気持ちで創らないと良い人形にはなりません」。穏やかな笑顔に氏の達観した心境を見る。どこか懐かしい面差しをたたえた三十余体の人形が、秋の和光ホールにゆったりとくつろぐ。

前田金彌(まえだ・きんや)

1929年
横須賀市に生まれる
1954年
衣裳人形の重要無形文化財保持者・野口園生に師事
1974年
日本工芸会正会員となる
1982年
日本伝統工芸展奨励賞受賞
1985年
日本工芸会人形部会幹事に就任
1986年
86年より和光にて個展(90・93・96・99・2002・06年)。
1992・2000年
日本工芸会東日本支部副幹事長に就任
1996年
日本伝統工芸展主任鑑査委員・審査委員
2000・05年
神奈川県美術展審査委員
2003年
「今日の人形芸術想念の造形」展に出品
2006年
伝統文化ポーラ賞優秀賞受賞
2010年
21世紀の伝統工芸―世界の眼―展記念展重要無形文化財保持者賞受賞
現在
日本工芸会正会員、日本伝統工芸展特待者、さがみ工芸会会長、日本芸術人形学園学園長
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