展覧会のご案内
工芸・Kôgeiの創造
―人間国宝展―
- 会期
- 2021年4月8日(木) ~ 2021年4月25日(日)
10:30~19:00 最終日は17:00まで
セイコーハウス銀座 6階
セイコーハウス銀座ホール
毎年春に開催する、陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形といった工芸分野の重要無形文化財保持者(人間国宝)の作品が一堂に会するこの展覧会も、今回で六回目を迎えます。日本の工芸の特色は、豊かな自然を背景に人々の生き方と渾然一体となって固有の美意識を形成していくところにあります。作り手は、多様な自然素材と語らいながらその特性を生かし、自身の高度な技を駆使して自らの芸術性を表現していきます。その日本独自の伝統文化は、途切れることなく現代まで連綿と受け継がれています。近年、人々に恵みをもたらすはずの自然が、私たちを脅かす存在となる出来事が多く発生しています。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための自粛生活が長く続き、誰もが閉塞感を抱えています。一方で、普段ならまったく気付かなかった、何気ない日常生活の愛おしさや大切さを感じる特別な機会になったとも考えられます。出品作家を代表して、陶芸家の十四代 今泉今右衛門さんに今回の展覧会についてお話を伺いました。「日本の伝統工芸は長年、人の暮らしの中に息づいてきました。自然との共存の中で造られたものは、人々の手に触れられ、大切に使われ、生活に彩りを添え、日本の大切な文化の一翼を担ってきたように思えます。人の暮らしは移り変わります。伝統も生きて流れているものです。常に時代、人の暮らしに向き合い、新たな可能性に挑むことが我々伝統工芸にたずさわるものの責務です」。今展では、人間国宝の方々が、その技と美を余すことなく表現した作品が出品されます。渾身の大作から日々の生活空間を豊かに彩る作品にいたるまで、作り手の深い想いが込められた秀作の数々を一望できる稀有な展観です。手わざの美しさ、そして素晴らしさを再確認でき、また、日常の暮らしの中に新たな楽しみを見つける場にもなることでしょう。
協力:公益社団法人 日本工芸会
◎展示品を掲載した図録(税込¥2,000)はお電話またはメールでのご注文、配送(送料サービス)を承ります。
お電話:(03)5250-3016(美術部直通)
メール:[email protected]
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陶芸
今泉今右衛門
色絵雪花墨色墨はじき四季花文花瓶 (11×25.2×高さ19㎝)
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染織
鈴田滋人
木版摺更紗帯 「滴翠」
「雨上がりにノウゼンカズラの花と生い茂る葉をスケッチする。初めは花を主体としたデザインで情景を描くが、葉だけの繰り返しに新たな構成の面白さを見出し、葉に残る滴が初夏の光に映えるイメージとして文様を展開する」。
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漆芸
大谷早人
籃蒟醤十二角小箱 (15×15×高さ7.5㎝)
「素地は十二角に竹ひごを編んで成形しています。図案は道端にある、何気ない草を蒟醤彫り伝統の小紋で表現し、その上を2匹の蝶が乱舞している様をデザインしました」。
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金工
大角幸枝
南鐐急須 「弦月」 (9.2×14.8×高さ8.5㎝)
「茶処に育った所為か、急須が好きである。煎茶の淹れ方は小さい時から厳しく躾けられた。急須で淹れたお茶の最後の一滴を、押し戴いて飲んでいた祖母を思い出す。銀や銅で作る急須は、面倒でも一枚板で注口まで作ることにこだわる。金属は焼物と違って熱伝導がよいので、部品は素材を考える。蓋の摘みはアンティークビーズを採用、取っ手は長めに、三弦の糸巻を加工して用いた。銀の急須は風雅でお洒落な『おうち時間』を演出する」。
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木竹工
勝城蒼鳳
根曲竹摺漆花籃
「葱園曙光」
「葱畑に朝日が差し込む情景を表現したく、根曲竹を用いました。根曲竹は丸みがあり幅も揃えないで、葱の表情を出すことを心掛けました。摺漆で艶を出して仕上げ、葱の美しい明るい表情を創出してみました」。
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人形
秋山信子
園比屋武御嶽石門前 (高さ35㎝)
「園比屋武御嶽石門は琉球王国・尚真王時代(1519年)に築かれた門(拝殿)です。石門の後に広大な森が広がり、神聖な場所でといいます。琉球国王が首里城を出て各地を巡る際に道中の安全や国家の繁栄を祈願したそうです。がこの御嶽で祈願する姿を首里城焼失と現在の世界情勢と重ね合わせ制作しました」。